映画のような日常
基本情報
著者 町田洋
短編 『UTOPIA』描き下ろし
書籍 『惑星9の休日』紙:2013年 祥伝社 / 電子:同年 同社
冒頭
主人公の青年は雇用主のじいさんにたくさんの映画のフィルムを倉庫に運ぶよう頼まれる
この倉庫はかなり大きく所狭しとフィルムが置かれているが、じいさんはこのすべての映画を観たという——
感想|グッとくるコマ【序盤より】
打ち上げ花火で遊んだらボヤが起きて事務所の壁に黒く焦げた跡が
アップではなくちょっと遠目から見た感じがなんだかおもしろいです
カメラワークって漫画や映画では受け手として「これはすごい!」と感心することが多々ありますが、他方で例えば小説でカメラワークに驚くことって(比較的に)少ない気がします
芸術のそれぞれの形態によって得意とするものは違うということですね
ぜひこう表現したいのですが、かわいいコマでもありますよね
返事の「うん」も良い味を出しています
ボヤが起きたことを示す描写ですから本来はヒヤヒヤするコマですが、それが逆手にとられている
特徴としてこういった愛おしいポイントが非常に多く、また風味がそれぞれ異なります
(とても語り尽くせません)
あえて例えるなら、タント紙でできた華やかな箱に入っており、さまざまなフレーバーが詰め合わせになったリッチなチョコレートのよう
この本は電子に加えて紙でも所有し、本棚にそっと並べておき、眠れない夜に手にとってちょこちょこ読み返したい——とか思う
映画のフィルムを倉庫に運ぶ
コマから舞台の広さや物体の多さが伝わると、どこかドキドキしませんか?
やはりダイナミズムが読者の期待を煽るからでしょうか
だいたいの場合、ストーリーにおいてこういう場所が前振りされると、それがきっかけとなり後に派手な出来事が起きますからね
お約束というやつです
小さな舞台で小さな出来事が起こる物語も詩みたいでじんわりとした良さがあります
(漫画だとジャンルとしては恋愛が多い気がします)
一方、大きな舞台で大きな出来事が起こる物語には霧が晴れるようなスカッとさがありますよね
不思議なもので、そのどちらを読みたい気分か、それはその時になってみないと分からない
読むことで感情を動かされる(感動とはよく言ったものですね)のみならず、心がどの方向、速さ、大きさで動くかをつぶさに感じ取ることができれば、自身がどのような精神状態にあるのかを知るリトマス試験紙的な効果も得られます
自力ではなかなか難しい自身の客観視をさせてくれるわけです
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