夢の世界を揺蕩う
基本情報
著者 つげ義春
短編 『ねじ式』1968年 月刊漫画ガロ
書籍 『ねじ式』紙:1994年 小学館 / 電子:2022年 同社
冒頭
海で泳いでいた主人公はメメクラゲに左腕を噛まれてしまう
静脈が切断され、血がとめどなく流れる
青ざめながら漁村で医者を探すが村民はまともに取り合ってくれない——
感想|グッとくるコマ【序盤より】
海でメメクラゲに左腕を噛まれてしまい——
我々の中に存在するあるべき世界という概念が少しずつ溶けていく感覚
多くの読者がこの短編をシュールレアリスティックで夢を見ているようだと感じるはずです
それもそのはずで、実際に著者のつげ義春氏が見た夢が元となったそう
コマに映っている主人公の左腕にご注目ください
怪我をしていますが、ご存じの通り実際にはこのように血管が飛び出すことはありません
序盤ですでに非現実感が強烈な印象をもって読者に植え付けられているわけです
ところで、手前でうずくまっている主人公の後ろで楽器を持って歩いている4人の男の子たち(?)は何を示唆しているのでしょうか?
読み手によっていくつもの解釈があると思います
僕は音楽が持つ一方向性が主人公を無邪気に傷つけているのではないかと捉えました
ちなみにメメクラゲは本来は××クラゲで、この不思議な名称の生物は誤植によって生じてしまったそうです
傑作には面白いエピソードがついてくるものなんですね
私自身、書きたいことが多すぎて、話があちこちに飛んでしまいました
乗り合わせた汽車にはキツネの面をつけた乗務員が
尋常ならざる人物がキツネの面を被っているのってフィクションの世界ではよくありますよね
個人的に最近読んだ『鬼滅の刃』の錆兎もそうでした
キツネの面は能楽や神楽あるいは稲荷神社に端を発するそうですが(すみません、調べてもよく分かりませんでした)、漫画のキャラクターに被せた先駆者ってつげ義春氏だったりするのでしょうか?
ちなみに同時期に同著者が描いた短編漫画『ゲンセンカン主人』では主人公が駄菓子屋で天狗の面を購入し被ります
さらにちなみに、主人公が手に取りはしないもののその駄菓子屋のコマにはキツネの面も映っています
心がザワザワする良い意味で不気味なシーンです
こうなるとキツネの面は単なるテキトーな道具ではなく、つげ義春氏にとって重要なファクターであることはまず間違いありません
キツネは神様の使いだったり、人を惑わす存在だったり、考えてみると文化的にキャラクターが濃い動物で、そういった特徴から由来しているのでしょうか?
考察するのも楽しいですね
あなたはどう考えますか?
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