久しぶりに会ったならば
基本情報
著者 穂積
短編 『モノクロ兄弟』2011年 flowers
書籍 『式の前日』紙:2012年 小学館 / 電子:同年 同社
冒頭
同級生だった由起子が癌で亡くなり、葬儀が終わった
この機会に、10年疎遠だった双子の兄弟である志郎と禄郎はビールのうまい店で再会する
積もる話があり、話題は尽きない——
感想|グッとくるコマ【序盤より】
同級生だった由起子の葬儀を終え、10年ぶりに再会する双子の兄弟
「お前は変わらねぇな」のようなセリフは古今東西その多くのシーンで発せられてきましたが、改めて味のあるセリフであると感じ、ほんのりジーンとしました
昔から親しくしているという証左であり、そこには時間が紡ぐ愛、言い換えるなら深さがありますから
実生活で言ったり言われたりしたい
(年齢を重ねることの数少ないメリットの1つ)
こちらの『モノクロ兄弟』は文字通り兄弟という関係性ですが、親子、師弟、はたまたご近所さん(『葛飾ラプソディー』には「ジョギングしていた大工の頭領にガキのまんまだと笑われたのさ」という歌詞があったりしますね)だったり、人と人との強い結びつきは、ただそれだけで物語になりますね
人に歴史ありと言ったりもしますが、これは正鵠を得ていると思います
ただ、それをそのまま描写するとキャラクターが突っ走りすぎるためか青臭い作品になってしまいがち
この諸刃の剣を見事に扱いこなしたこちらの『モノクロ兄弟』を含め、世の傑作は読者の人生にスポットライトを当ててくれます
ビールのうまい店で積もる話を
飲食店ですからそこまで広くはなく、調理する音や客の話し声でザワザワしている
そういういくつかの意味で雑多な空間も案外悪くないですよね
かしこまった気分から解放され、少しだけノリが軽くなる
広くて静かな空間より、むしろ落ち着いたりして
とりわけ音に注目(傾聴?)したい
映画と違い漫画にはオーディオがありませんから、現場の音をどう伝えるかは1つの課題となります
その点、飲食店のザワザワした感じは読者の大勢が(実生活で聞き覚えあるわ〜)と思うため、舞台として飲食店を選んだのはうまい戦略かもしれません
(必ずしも飲食店でなければならないというストーリーではおそらくないため、意図的なものだと感じました)
これが芸術家に求められる嗅覚ですよね
(ここでは音の話でしたが)
最適な舞台、性格、セリフ……そういった要素を決して外さず、スバズバ真ん中に的中させる
読者として逐一には気づきにくいですが、ただクオリティとしては確かに感じ取っている
神は細部に宿るという言葉は本当らしい
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