物語の内側に広がる宇宙
基本情報
著者 手塚治虫
短編 『帰還者』1973年 プレイコミック
書籍 『時計仕掛けのりんご』紙:1983年 講談社 / 電子:2014年 手塚プロダクション
冒頭
ケンタウルスαで宇宙平和コンベンションが開催された
地球人の主人公・吉良たち若者グループ5名はこれに参加
すると地球へ帰還するため走らせている連絡船で見知らぬ宇宙艇からのコールを受信する——
感想|グッとくるコマ【序盤より】
宇宙平和コンベンションの帰りに
みんな(?)大好き宇宙SFです
他には、小説だとジェイムズ・P・ホーガンの『星を継ぐもの』、映画だとスタンリー・キューブリック『2001年宇宙の旅』なんかが思い浮かびますが、それこそたくさんあって枚挙に暇がありません
私だけかもしれませんが、宇宙SFに触れる際、(テーマは宇宙か〜)ぐらいに思っているのですけれど、よく考えたらこれはもったいないことです
なぜなら、物理学的に考えて宇宙のことは分からないことだらけなのだから
人類は宇宙について解明できていなさすぎて、どれくらい解明できているか概算すらできないという話ですからね
宇宙を題材とするには綿密なリサーチと「未知に立ち向かうぞ!」という勇気が必要です
一方でクリエイターは、自身の経験の中でも消化できたものを作品に転化しがちかもしれません
筋書きがすでにあるから作品化しやすいし、実際に起こったことだから破綻がなくて安心だし
つまりその理屈が通用しない宇宙SFは貴重、これに尽きます
死滅しかけの異星人が水を分けてくれるよう頼むが——
良い意味で典型的な、物語が動き出したことが感じられる駆け引きのシーンですね
果たして損するか得するか、登場人物たちはこの駆け引きでヒリついていますが、読者である我々は高みの見物です
スポーツ観戦もそうですがこの緊張と緩和の両方を味わえるのが芸術の良いところ
手塚治虫氏のいくつかの作品において非人類との折衝、争い、あるいは協力が描かれています
(『荒野の七ひき』が哲学的でおすすめで、いつかこのサイトでも紹介させていただきたい)
非人類とのコンタクトが我々の実社会で実現するとすれば、それはさらに文明が発展した時、すなわち未来です
手塚氏は未来を見通している
そんな手塚氏が描く非人類とのコンタクトですが、私の把握している限り、争い自体が争う彼らにとって功を奏した作品はなかったはずです
(争うことでその不毛さに気づかされるシーンはあります)
手塚氏は戦争経験者であるためか、その根幹にあるとも言うべき博愛の精神はあまりに尊い
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