石黒正数『探偵綺譚』

日常はミステリの果てない連続



基本情報

石黒正数『探偵綺譚 石黒正数短編集』徳間書店 表紙
引用元:石黒正数『探偵綺譚 石黒正数短編集』徳間書店

著者 石黒正数

短編 『探偵綺譚』2003年 コミックフラッパー

書籍 『探偵綺譚 石黒正数短編集』紙:2007年 徳間書店 / 電子:2008年 同社

冒頭

この町には「夜に稲奈神社へ行くと帰って来られなくなる」という言い伝えがある

誰も本気にはしていなかったが

しかし高校の同級生で友達の見沢が失踪したことで、主人公の嵐山はこれらの事件に深入りすることに——

感想|グッとくるコマ【序盤より】

石黒正数『探偵綺譚』の1コマ 地方が舞台
引用元:石黒正数『探偵綺譚』-『探偵綺譚 石黒正数短編集』徳間書店より

地方が舞台

 

クローズドサークルというミステリ用語をご存じでしょうか?

文字通り閉ざされた空間を指します

船、列車、孤島、山荘……そんな逃げ場がない場所で事件が起きるわけです

構造を把握しやすいため深い没入感があって怖さマシマシ

 

船と列車はさておき、孤島と山荘はほとんどの場合地方に位置しています

こちらの『探偵綺譚』はクローズドサークルではありませんが、そんな地方×ミステリ

この組み合わせにはコアなファンもいるはず

 

あとがきに書かれていますが、『探偵綺譚』は石黒正数氏の代表作『それでも町は廻っている』の連載少し前に描かれています

そのため『それ町』で活躍するキャラクター嵐山歩鳥や紺双葉が先んじて描かれるなど(いくつかの要素が)共通しており、『探偵綺譚』の舞台が地方なのに対し『それ町』は都市とのこと

 

個人的な話ですが、私は先に『それ町』を全巻読み、アニメも観、公式ガイドブックの『廻覧板』も読んだどっぷりのファンです

ですから、果たして冷静な感想を抱けたか自信がありません

石黒正数『探偵綺譚』の1コマ 失踪した友達である見沢の幽霊を見たという話が——
引用元:石黒正数『探偵綺譚』-『探偵綺譚 石黒正数短編集』徳間書店より

失踪した友達である見沢の幽霊を見たという話が——

 

事件に首を突っ込むとはまさにこのこと

言わばお約束で、受け手(読者)としてもストーリーの道筋が予見できるから期待感が高まるし、無意識に(良い意味で)心構えをしている

 

ミステリって取りも直さず探偵の知的好奇心に支えられているんですね

古典ミステリでは探偵は依頼を受けてゆっくり推理に取りかかる印象ですが、最近は(というほど近々でもないですが)探偵が結構アクティブな作品の数も増えてきた——と私は感じています

アクティブな探偵を追っている我々もその知的好奇心を共有しており、謎が解決しないことにはムズムズするためページをめくる手が止まらない

 

『探偵綺譚』において活躍する(与えられた役割としての)探偵はこちらのコマの女子高校生・嵐山です

シャーロック・ホームズやエルキュール・ポワロのように——誤解を恐れずに言えば——達観した成人男性が担うことが多かった役割を、キャピキャピした(死語)女子高校生・嵐山が担うというところに、漫画という媒体の自由奔放さが感じられてなんだか嬉しく思います

芸術は飽きられる→趣向を変えるという飽くなき工夫の連続なのかもしれない

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