世界は廻り廻って
基本情報
著者 藤子・F・不二雄
短編 『クレオパトラだぞ』1980年 ビッグゴールド
書籍 『藤子・F・不二雄 SF短編 PERFECT版 6 パラレル同窓会』紙:2000年 小学館 / 電子:2018年 同社
冒頭
主人公の青年・楽悟は自分がクレオパトラになった夢をみる
しかし現実では、階段を降りれば足を滑らせて転げ落ちるし、入社試験を受けても不合格になるし、とことん冴えない……
この閉塞感をどうするか——
感想|グッとくるコマ【序盤より】
紀元前1世紀 プトレマイオス朝
時代と場所を1コマ——すなわち一瞬——でひとっ飛びにできるのは漫画の素晴らしいところですね
輪廻転生というテーマが、時代や場所の変遷を違和感なく導出します
古今東西でこのテーマが流行るわけです
先述の通り、テーマは輪廻転生で書籍のタイトルにもSFとありますが、個人的なジャンル分けとして実験的に歴史とさせていただきました
せっかくなのでこの理由について書かせてください
藤子・F・不二雄氏は誰もが知る『ドラえもん』をはじめ、多くの作品に根底としてSFが組み込まれています
しかし平凡なSFという枠に収まらず、例えば『ドラえもん』では台風の子ども〈フー子〉と友情を築くファンタジーや、宝島の地図を入手する冒険など、SF×ホニャララという組み合わせによる無限大の広がりをもつのが特徴です
よってこちらの短編漫画『クレオパトラだぞ』でもサブ(?)テーマである歴史に注目したい、また、してほしいと思った次第です
注目する角度をいくつか持つのはきっと良いことですから、ぜひ
クレオパトラになった夢から覚めて
序盤で充分に分かるのですが、この主人公の青年・楽悟は金も仕事もなく失恋もした冴えない男というキャラクターです
そんな雰囲気を、小さく汚い部屋を描写することで瞬時に読者に伝えています
地の文で伝える方法もありますが、読者としては画で理解するより文で読む方が手間ですし時間もかかる
藤子・F・不二雄氏の作品を読んでいて、いつも無駄なコマが全くないことに驚かされます
そのため、非常にテンポが良く密度が高い
このテンポと密度は、芸術においてそれを普遍的な作品に押し上げるために最も重要な要素の1つだと個人的には思っています
発想が良かったり、漫画の場合画力が高かったりしても、グダグダしていて冗長だったらやっぱり受け手(読者)は付いてこないのではないか
私を含む読者のほとんどはただ気楽に読んでるだけですが、それでもテンポと密度が洗練されていることにバチっと気づかせる藤子・F・不二雄氏は(言うまでもなく)一流であるという話でした
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