萩埜まこと『波よりもおだやかで、雲よりも速く』

仲が良くても良いことばかりではなかったり



基本情報

萩埜まこと『萩埜まこと短編集 どこかの星のふたり』KADOKAWA 表紙
引用元:萩埜まこと『萩埜まこと短編集 どこかの星のふたり』KADOKAWA

著者 萩埜まこと

短編 『波よりもおだやかで、雲よりも速く』2022年 青騎士

書籍 『萩埜まこと短編集 どこかの星のふたり』紙:2022年 KADOKAWA / 電子:同年 同社

冒頭

高校生の主人公・美嘉は普段一緒に登校している早瀬に「明日から学校一緒に行くのやめよう」と切り出す

彼女らが付き合っているというが学校で流れているから

美嘉はこの関係どう受け止めるべきか悩んでいる——

感想|グッとくるコマ【序盤より】

萩埜まこと『波よりもおだやかで、雲よりも速く』の1コマ いつも一緒に登校している早瀬に相談が
引用元:萩埜まこと『波よりもおだやかで、雲よりも速く』-『萩埜まこと短編集 どこかの星のふたり』KADOKAWAより

いつも一緒に登校している早瀬に相談が

 

仲の良い異性に相談を切り出すのってまさに青春って感じで素敵です

相談というのは心を開いている相手とのみしか成立しませんから

実生活でまさにこのコマのように誰かから「実は君に相談があるんだけど……」と切り出されたら(信頼されてる……!)って嬉しくなりますよね

相手は相談したいほど悩みを抱えているということだから喜んではいけないんでしょうけれど……

とにかく、こういったお互いの心の動きを漫画として描き出せたのは、経験と鋭い観察眼があってのことだと思います

 

著者である萩埜まこと氏はあとがきでこちら短編漫画『波よりもおだやかで、雲よりも速く』を「直球で真っ直ぐな青春ものをということで挑戦してみた」と書かれています

これはまさに達成されたと僭越ながらイチ読者として私は思いました

ところで、こちらのサイトでは短編漫画を便宜的にジャンル分けしており、いくつかありますが青春恋愛もそれぞれそのうちの1つです

で、学生の恋愛が描かれた短編漫画を青春と恋愛のどちらに分類すべきかよく迷います

 

先述の通り萩埜まこと氏はこちらの短編を青春ものとはっきり述べられています

こういった点から考えるに、なかなか言語化が難しいですが、恋愛であってもそれが若さ特有の屈折を内包していたら、生涯を通して成立する恋愛を離れより刹那的な青春に分類されるのかもしれない

……自分で言っていてよく分からなくなってきました

萩埜まこと『波よりもおだやかで、雲よりも速く』の1コマ 2人で自転車通学
引用元:萩埜まこと『波よりもおだやかで、雲よりも速く』-『萩埜まこと短編集 どこかの星のふたり』KADOKAWAより

2人で自転車通学

 

私も下手くそですが絵を描くことがありまして、それで気づいたのですが、自転車を描くのって難しくて(もっと正直に言うと)だいぶ面倒臭い

自転車を思い浮かべていただきたいのですが、パーツが実にたくさんあって、しかもそれらが剥き出しになっているため細かいところも描かなければならず、手間がかかるんですよね

そして自転車って派手な乗り物ではないため、描くのに相当なカロリーを消費しても、全然「頑張って描いてるなあ」なんて褒めてもらえない

 

ですから渡辺航氏の自転車競技を題材にした漫画『弱虫ペダル』とかって描く作業がかなり大変だったのでは、と私は推測します

それから荒木飛呂彦氏の漫画『ジョジョの奇妙な冒険 Part7 スティール・ボール・ラン』は北アメリカ大陸横断レースの話でがたくさん登場するのですが、自転車同様乗り物である馬を描くのはおそらく大変で、特にアニメーションにした際には相当なコストがかかるのではという噂(噂かい)を聞きました

ですから現時点で『スティール・ボール・ラン』はアニメ化されていませんが、もし実施されれば馬の作画は2Dから動かしやすい3Dになる……という噂(また噂かよ)があったり

 

話が逸れましたが、とにかくこちらの短編漫画『波よりもおだやかで、雲よりも速く』のように、描くのが大変な自転車を避けずに描くという作品に対する誠意は、クリエイターの尊さそのものであるように思います

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