庄野晶『ゆうかい』

雪女ドラキュラ



基本情報

庄野晶『庄野晶短編集 グッド・ナイト・フィールド』KADOKAWA 表紙
引用元:庄野晶『庄野晶短編集 グッド・ナイト・フィールド』KADOKAWA

著者 庄野晶

短編 『ゆうかい』2022年 青騎士

書籍 『庄野晶短編集 グッド・ナイト・フィールド』紙:2022年 KADOKAWA / 電子:同年 同社

冒頭

雪山で埋もれている大男を発見した雪女

助けるために苦労して小屋まで担いだ

男は見慣れない黒い服を着ており、さらにヒトが彫られた十字の組み木の入った瓢箪を所持しており——

感想|グッとくるコマ【序盤より】

庄野晶『ゆうかい』の1コマ 大男が雪に埋もれている
引用元:庄野晶『ゆうかい』-『庄野晶短編集 グッド・ナイト・フィールド』KADOKAWAより

大男が雪に埋もれている

 

大変個人的な話で申し訳ないのですが私は比較的温暖な気候の長崎県出身で、冬になってもほとんど雪が降らず、積もってもくるぶしまで到達しないくらい少しなので、積雪というものをどこかファンタジーに捉えているところがあります

北国では日常のことなんでしょうけどね

逆に長崎県民以外の方からは、長崎県の特徴である坂の多さ急な坂にたくさん家が建っているのを驚かれたりして

 

日本は北は北海道から南は沖縄までさまざまな地理的特徴があります

(地理の授業か?)

寒かったり暑かったり、海があったり山があったり、都会だったり田舎だったり……挙げたらキリがありません

そしてさまざまな土地出身、ないしは取材をした漫画家がいて、その地理的特徴が作品に反映されるため、例えば作品の舞台だったりが非常にバラエティに富んでいる

 

日本がこのように地理的な多様性が豊かなのは(当たり前ですが)ほとんどは人為的なものではなく自然的なものです

だからこそすごくありがたい

漫画を楽しむ際に作品自体やクリエイター個人はもちろんその背後にある土地柄も意識すると、さらに楽しめるのかもしれませんね

庄野晶『ゆうかい』の1コマ ヒトが彫られた十字の組み木
引用元:庄野晶『ゆうかい』-『庄野晶短編集 グッド・ナイト・フィールド』KADOKAWAより

ヒトが彫られた十字の組み木

 

すぐに明らかになりますが、雪女とドラキュラのクロスオーバーです

記憶を遡ってみたのですが、こういった設定はありそうでなかったですね

(あなたは過去に雪女とドラキュラが話しているシーンを見たことがありますか?)

 

女と男、和と洋、白と黒、こういった対比が鮮明で印象深い

特に雪女は白い服を着ていてドラキュラは黒い服を着ているという対比なんて(言われ見れば確かにそういうイメージだよな)と膝を打ちました

キャスティングの勝利ですね

最初はギョッとして設定を受け入れるのに時間を要しましたが、読み進めていくとそれが馴染んできてハマります

 

自由なのが芸術の素晴らしいところだと思います

しかし簡単にこう言うけれど、その自由さをどう表すかは難しい

作中で自由に人を傷つけていいのか?

きっとそういうことじゃない

 

その点、先入観では交わらない雪女とドラキュラがごく自然に同じコマに登場するのは、優しく——誰も傷つけず——自由を擁護しているようで嬉しくなりました

発想ってもしかしたら思いやりなのかもしれない

人類史と芸術が切っても切り離せないわけです

(大げさ?)

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