未来人との邂逅
基本情報
著者 澤江ポンプ
短編 『夜明けの未来ちゃん』2010年 Fellows!
書籍 『近所の最果て 澤江ポンプ短編集』紙:2020年 リイド社 / 電子:同年 同社
冒頭
引きこもりの青年・源三のもとに、子孫だという女の子・ミライがやってきた
彼女は部屋の中で野球をして窓ガラスを割るなどとにかく無茶苦茶している
さらには過去観光がしたいと切り出すが——
感想|グッとくるコマ【序盤より】
未来人がいきなり
躍動感、この一言に尽きます
あとがきによるとデビュー3作目だそうで、若いことによる無鉄砲さが感じられて素晴らしい
(誰目線だ)
私が漫画を読んできた経験上(別にズブの素人なんですが)、目を見張るようなダイナミックなコマを描く才能は特に新人の頃に発露するようで、ベテランになると消失してしまうケースもあるようです
なぜだろう?
ベテランになるにつれて画よりストーリーにより重きを置く傾向にあるのでは、と感じている
個性的なコマは当たればセンスですが外れればサブいということで、地位を得たベテランはリスクヘッジのため挑戦しなくなるのかもしれない
逆に言うと、新人は挑戦できるという点で貴重な時期を生きているわけです
これは芸術に限らずビジネスとかでもそうなんでしょうね
漫画の話に戻すと、そういった新人時代の作品は連載を持つ前に執筆したものだったりするので、時を経て短編集に収められることが多いです
この初々しさが堪能できるのも短編集を蒐集する醍醐味の1つですね
時空を超えて来たと言われたが
漫画に限らずクリエイターが受け手に作品の設定を明らかにする過程——多くは序盤——で、クリエイターは相当神経を尖らせているのでは、と私は推測します
もし説明が先行したり、そもそも説明が多すぎたりしたら受け手は冷めてしまいますから
こちらのコマで未来人・ミライがタイムトラベルして来たということが読者にとっても明らかになりつつあります
しかし少なくとも読者には衝撃の事実であるにも拘らず、主人公の青年・源三は直前にバットで殴られた頭が腫れてきたことの方を気にしている
この読者と登場人物の感じ方のギャップというかチグハグ感というかに素直に笑いました
漫才みたいで面白いですよね
(漫画を漫才に例えられると嫌でしょうか……?)
1コマ目からミライは大暴れしており、しかしこのミライの存在を源三が割とすんなり受け入れているところが凡百のタイムトラベルSFとは異なっています
このハイテンポによりリズム感が生まれ、ストーリーにグングン引き込まれる
凝った設定の作品は、まず受け手(読者)への説明でリズムが乱れがち……という前評判をあえて覆しにかかる姿勢が功を奏しているのかもしれません
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