心が拓く
基本情報
著者 市川春子
短編 『星の恋人』2007年 月刊アフタヌーン
書籍 『虫と歌 市川春子作品集』紙:2009年 講談社 / 電子:2012年 同社
冒頭
一人親の母が留学に行ったため叔父さんの家で居候させてもらう学生のさつき
4歳の時、叔父さんのために星のついた首飾りを作ろうとして指の一部を切り落としてしまった
今、叔父さんにはつつじという娘がいて——
感想|グッとくるコマ【序盤より】
居候先の娘さんと
漫画にはご存じの通りフキダシという様式があって、漫画家の誰もが同じように用いていると思いがちかもしれませんが、よく注目すると人によって実にさまざまです
形、たくさん使う、あまり使わない、中に含む文字が多い、少ない——
こちらの短編漫画『星の恋人』の著者である市川春子氏は1コマにフキダシを(分割を含め)多めに入れるパターンと、続けて全く入れないパターンが頻出します
そしてその両方がメリハリをつけて登場するため、心を掴まれる独特のリズムがある——と私は常々感じます
こちらのコマでは主人公の青年・さつきのセリフが「あの」と「僕」と「おじさんに〜」に分割されています
映画では役者が発話する際に間を取る、小説では三点リーダを用いたり鉤括弧を分ける、というようにセリフが分割されること自体は芸術においてしばしば見られ(聴かれ)ます
しかし、フキダシを分割することでそれを表現するというのは当然漫画ならではです
そして芸術の形態によって同じセリフの分割であっても感じられ方はだいぶ異なる
巨視的な見方もたまには面白いかもしれません
居候する家
家ってその人の性格……いや、もっと言うと人間性がよく現れますよね
住宅とか家具とかって高価な買い物になりますから、よっぽどの金持ちでない限り必然的に購入する際どれを選ぶべきかウンウン悩むことになる
コンビニで何のお菓子を買って食べようか迷うのとはレベルが違います
だから住宅とか家具にはその人の好みや経済力などが反映されやすい
こちらの短編漫画『星の恋人』では家の——それもすごくオシャレな——様子が多く描写されます
私の推測ですが、これは意図的で、著者の市川春子氏は家によって登場人物の人間像を表現し、ひいては作品の雰囲気を形成しようと試みているのではないか
あくまでWikipediaに載っていた情報ですが、市川春子氏はエディトリアルデザイナーとして働かれたご経験があり、ご自身の作品の装丁を手がけることもあるのだとか
作中の家の(に限らずではありますが)デザインが洗練されているのは、こういったご経歴とも関連があるのでしょう
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