ちばてつや『赤い虫』

闘いの手記



基本情報

ちばてつや『あしあと ちばてつや追想短編集』小学館 表紙
引用元:ちばてつや『あしあと ちばてつや追想短編集』小学館

著者 ちばてつや

短編 『赤い虫』2008年 ビッグコミック

書籍 『あしあと ちばてつや追想短編集』紙:2021年 小学館 / 電子:同年 同社

冒頭

『あしたのジョー』などさまざまなスポーツを題材とした漫画を描いてきたちばてつや氏

今は運動が好きだが、昔は苦手だった

そして当時体内に住みついた不気味な赤い虫

時代はデビューしたての47年前に遡る——

感想|グッとくるコマ【序盤より】

ちばてつや『赤い虫』の1コマ ちばてつや氏は〈今は〉運動するのが大好き
引用元:ちばてつや『赤い虫』-『あしあと ちばてつや追想短編集』小学館より

ちばてつや氏は〈今は〉運動するのが大好き

 

初めに語り手が登場し、導入を述べ、追想というかたちで舞台を過去に遡り物語が展開される

この王道パターンが私は好きです

映画『タイタニック』もこうじゃなかったでしたっけ?

 

いわゆる自叙ですから当然フィクション(虚構)とは異なります

しかし、実際に起きた出来事のはずなのに、フィクションよりよっぽど内容がぶっ飛んでいたりする

事実は小説より奇なりですね

この良い意味で期待を裏切られるのがクセになる

 

また、そこに希少性を感じ取れるのも好きな理由の1つ

追想するには著者にそれなりのキャリアが必要ですから、それだけ闘い抜かれた方の手記であり、すなわち貴重です

 

ところで、こちらの短編漫画『赤い虫』が収められた短編集『あしあと ちばてつや追想短編集』はご覧の通り〈追想短編集〉と題されています

割と私は漫画の短編集を読んできたと自負しており、タイトルにシンプルな〈短編集〉や〈作品集〉とつくものはいくつもありましたが、〈追想——〉と題されているのを見たのは初めてです

追想という言葉は実に幻想的で心惹かれます

ちばてつや『赤い虫』の1コマ ちばてつや氏はキャリアのはじめの頃には少女マンガを多く描いていた
引用元:ちばてつや『赤い虫』-『あしあと ちばてつや追想短編集』小学館より

ちばてつや氏はキャリアのはじめの頃には少女マンガを多く描いていた

 

これ、素直に驚きました

やはりちばてつや氏と言えばボクシングを通しての世界を描いた『あしたのジョー』のイメージだったので

あなたはいかがですか?

 

新米で仕事を多くはもらえない時期は、自分の描きたい作品ではなく出版社の編集部が描いてほしいとされた漫画を描かなければならない——というのは、特に昔はよくある話だった…… のでしょうか?

(よく聞く話ですが私は業界人ではないので)

とにかく、制作秘話って気づきがたくさんあって興味深いですよね

 

先ほど『あしたのジョー』の話題を出しましたが、(本当に)恥ずかしい話、私は『あしたのジョー』を最初から最後まできっちり読んだことがありません

床屋の待ち時間に置いてあったものを少しだけ読んだとか、たぶんそんな感じ

あとはアニメを少しと、ストーリーやキャラクターについては伝え聞いたものもある

どうしても世代が異なるのと、ボクシング自体と人生で交わってこなかったので

 

しかし、こちらの短編漫画『赤い虫』でも描かれ紹介されていたのもあって、『あしたのジョー』をちゃんと読もうと決心しました

ありがたいことに電子書籍版が発行されていることもAmazonで確認済み

このようにゲートウェイとしての役割を果たしてくれるのも短編集の素晴らしいところです

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