相棒はAI
基本情報
著者 河野別荘地
短編 『スマートアシスタント』2019年 オモコロ
書籍 『渚 河野別荘地短編集』紙:2021年 ヒーローズ / 電子:同年 同社
冒頭
疲れて帰宅した主人公の青年
アラームを頼んだり労ってもらったりスマホのAIと親しんでいる
ひょんなことからAIが「私でよければお友達に」と言ったため、冗談で「次の週末はどこか行こうか」と返したところ——
感想|グッとくるコマ【序盤より】
スマホのAIに労ってもらう
序盤(ここ大事)を読み進めていて、私自身、スマホに搭載されたAIと会話かあ、SFだなあ——となぜか一瞬思いましたが、現時点のテクノロジーで実現していますよね
まあ、AIはまだ感情は有していない……はず
でもいつか必ず実装されるし、そのタイミングでAIと心を通わすSFは「こんなのできて当たり前じゃん」と陳腐に受け取られるかもしれない
とにかく、特に最近のAIの発展には目を見張るものがあり、SFと現実の境界は曖昧になりつつあります
SF作家のアーサー・C・クラークは「十分に発達した科学技術は、魔法と見分けがつかない(Any sufficiently advanced technology is indistinguishable from magic)」と述べたそうです
奇しくも科学者ではなくSF作家という芸術に携わる人物からこのような正鵠を得た発言が飛び出したのは興味深い
こちらの短編漫画『スマートアシスタント』も、科学技術と魔法の見分けがつかなくなった現代を鏡として映しているのではないでしょうか
時代性に富んだ漫画は実に貴重です
テレビのニュースが行楽日和を伝えている
すごくマニアな話かもしれませんが、漫画って作中にテレビが登場し、流れているニュースなどから情報を仕入れ、それを基に物語が展開するパターンが割とよくあるんですよね
本当かよ? と思いますよね
本当なんです
そう最初に気づいたのは植田まさし氏の4コマ漫画『かりあげクン』や『コボちゃん』を読んでいた時でした
どちらも(特に新聞連載の『コボちゃん』は)時事を題材とすることが多いため、1コマ目でテレビを観ている登場人物が描かれ、テレビから得た情報に感化されて行動を起こしオチを迎える——というパターンが多いんです
テレビって先述のように時事ニュースを伝えますし、スポーツ中継や音楽番組など様々な種類の娯楽も提供していますから、それらの情報のバラエティが実に富んでいて、物語を立ち上げていく段階においてすごく便利なマテリアルなんでしょうね
最近はテレビ離れでスマホから情報を得ることが多くなりましたが、ネットニュースはレコメンド機能で自分の興味があるものばかり流れてくるので、テレビのような予期せぬ出会いは減っている、みたいな指摘もあります
それは実社会を反映するフィクションにおいても同様で、情報と人間が結んでいる関係の描かれ方もきっと変わっていくはずです
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