雨宮もえ『心のままで』

成長とはたぶん乗り越えること



基本情報

雨宮もえ『心のままで』電書バト 表紙
引用元:雨宮もえ『心のままで』電書バト

著者 雨宮もえ

短編 『心のままで』2021年 ネギと創作漫画

書籍 『心のままで』紙:なし / 電子:2022年 電書バト

冒頭

目つきが鋭くクラスメイトから恐れられている転校してきてすぐの女子高校生・片山

しっかり化粧をして挨拶のイメトレまでしているのに……

ある日、同じクラスの男子・黒木が女子と修羅場になっているのを目撃し——

感想|グッとくるコマ【序盤より】

雨宮もえ『心のままで』の1コマ マスカラもばっちり
引用元:雨宮もえ『心のままで』-『心のままで』電書バトより

マスカラもばっちり

 

1人の女子高校生の成長という大きなテーマがありつつ、こちらのコマをはじめ化粧とはどういう存在かという読者への投げかけもあるようです

私は男ということもあってか化粧をしませんので(……これはステレオタイプですね。男性が化粧をしたって当たり前ですが)、こうして化粧という奥深い世界に触れられるのは貴重な体験です

 

まったく個人的な話になりますが、大学の社会学部の講義で化粧品メーカーであるマックスファクターと戦争の関係について学んだ記憶があります

その昔、アメリカの女性には戦地へ赴く夫や彼氏に手紙を書くという文化があり、その手紙の文末にはマックスファクターの口紅を塗ってキスマークをつけることが多かったそう

遠く離れていても愛しています

無事に帰ってきてください

みたいなメッセージを込めて

それは兵士である彼らの士気を鼓舞するのに一役買っており、ひいては戦争を通してアメリカという国を形作っていった

(記憶が定かではないので間違っていたらすみません)

 

結論として何を申し上げたいのか

化粧のようになんてことのない生活の一部であっても(もちろん先述の戦争に限らず)大きな役割を持っているということ

そして、それにスポットライトを当ててくれる芸術は重要であるということです

雨宮もえ『心のままで』の1コマ 目つきが鋭くて恐れられてしまう
引用元:雨宮もえ『心のままで』-『心のままで』電書バトより

目つきが鋭くて恐れられてしまう

 

本当は優しい心を持っていて仲良くしたいとも思っているのに、目つきが鋭いないしは顔が怖いせいで恐れられてしまい、コミュニケーションが上手くいかない……ってフィクションにおいてあるあるですよね

いや、実社会でも同じように悩まれている方もきっといらっしゃるはず

 

他の作品で言うと、臼井儀人氏の漫画、ご存じ『クレヨンしんちゃん』の主人公であるしんちゃんが通う幼稚園の園長先生も、顔が怖くて園児や先生、第三者に恐れられるシーンがありました

ギャグとして描かれていますが正直だいぶ不憫です

(笑ってしまうけれど)

 

コンプレックスを乗り越えるというのは実に普遍的なテーマですよね

特に子どもが読む童話なんかにも多くみられるので、それは何にも増して大人が子どもに伝えるべき教訓であると、多くの大人が共通認識として持っているということ

こういった責任感を持ってこちらの短編漫画『心のままで』をはじめ創作活動に邁進しておられるクリエイターは、一種の奉仕活動に取り組んでいるとも言える——と私は素直に思います

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