種族を超えた愛
基本情報
著者 ながべ
短編 『デージー、またあした。』2016年 異種恋愛物語集
書籍 『ながべ短編集 ヘンテコな愛』紙:2019年 一迅社 / 電子:同年 同社
冒頭
女の子・ゲルダは杖とバスケットを手にいつもの草原で待つ
大きく黒々とした鳥のデージーと会えるからだ
いつものように飛んできたデージーはゲルダにキレイな鉱石をプレゼントして——
感想|グッとくるコマ【序盤より】
杖とバスケット
こちらのコマは、こちらの短編漫画『デージー、またあした。』において序盤も序盤の2コマ目です
読者は世界観をまだほとんど把握していない状態ですね
で、ご覧の通り杖とバスケットが描かれています
もちろんこの2つはストーリーが進むとキーとなるアイテムとして再登場します
伏線——というほど大仰ではないですが、この段階ですでにさり気ない前振りが始まっているわけです
このような細かい心遣いが沁みます
人物を表現する際にその人物がどんなアイテムを持っているか?を描くのは実に有効のようです
浪人が刀を持っている、ギークがノートパソコンを持っている……あくまでフィクションにおける例ですが、枚挙に暇がありません
なんと言いますか、一発で分かるというのが良いんでしょうね
「この偉丈夫は浪人で——」「このおとなしそうな学生はギークで——」と地の文で丁寧に説明するのももちろんアリですが、特に短編漫画という媒体ではページ数が限られている分、切れ味が求められるのかもしれない
ヒリつく世界です
大きく黒々とした鳥
異種間での恋愛はフィクションにおいてしばしば見られます
しかし、人間と(人間以外の)動物が恋に落ちる際、この動物は人間の姿をしているパターンが多い気がします
……ややこしいですがちゃんと伝えられていますでしょうか?
例えば猫が人間と恋をする物語の場合、動物側は猫——つまり四足歩行で毛むくじゃらの獣——としての姿ではなく、なんらかの不思議な力によって人間の姿形にトランスフォームし、その時が来るまで表面上は人間同士の恋愛として描かれる
そしてこれもお約束ですが、最終的には(元から)人間側が「なんてことだ……君は猫だったのか……!」と気づき、しかし「それでも愛しているよ」と種族の壁を超えて恋愛が成就し、ハッピーエンド——という物語を個人的に何度も読んできた
「何度も読んできた」と書くとまるで私が飽きてウンザリしているように受け取られるかもしれませんが、本心として全くそのようなことはなく、上手くできているからこそお約束ですよね
説明が長くなりましたが、こちらの短編漫画『デージー、またあした。』はこのように動物が人間の姿を借りることなく、初めから最後まで人間とそのままの鳥の恋愛です
逃げも隠れもしないという感じですね
この度胸と挑戦の姿勢が素晴らしい短編漫画だと素直に思いました
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