少年を動かす不思議な力
基本情報
著者 藤子・F・不二雄
短編 『ポストの中の明日』1975年 週刊少年サンデー
書籍 『藤子・F・不二雄 SF短編コンプリート・ワークス 7 ポストの中の明日』紙:2023年 小学館 / 電子:同年 同社
冒頭
ピクニックで青木ヶ原樹海を通った4人の少年少女たち
しかし磁性溶岩帯のため方位磁石が当てにならず、曇り空で太陽もないため、遭難してしまった
主人公・市川はこうなることが昨日から分かっていたようで——
感想|グッとくるコマ【序盤より】
ドラえもんライク(主人公は左奥)
みなさまご存じ『ドラえもん』の4人の主要な登場人物、のび太、ジャイアン、スネ夫、しずかちゃんによく似ていますよね
外見もそうですし、すぐに性格が似ていることも分かります
(スネ夫っぽい子が別にイヤミな奴じゃなかったりと外見同様に微妙な差異はありますが)
『ドラえもん』が1969年連載開始なのに対し、こちらの短編漫画『ポストの中の明日』は1975年発表ですから、『ドラえもん』で上手くいった組み合わせを踏襲したということでしょうか
このどちらの作品も、実に登場人物に過不足がなく、役割を補い合い、ストーリーが心地よく進行します
調和がとれている様はまるでハーモニーですよね
特にこちらの短編漫画『ポストの中の明日』は、序盤で分かる通り少年たちがハイキングをしていて樹海で遭難する話です
それは必然的にケンカや協力が生まれる状況であり、登場人物たちがハラハラしながら関わり合うことで、先述の調和がとれたハーモニーが存分に発揮されます
レコードを聴いたことを回想する
この回想はストーリーの根幹であり、実は緊張感のあるシーンなのですが、個人的には(レコードを男女の子どもたち4人で聴くなんて青春だなあ)なんて思いました
友情を築くのはもちろん、特にレコードを聴くというのがナイスです
当時は当たり前ですが、今は(特に子どもが)レコードを聴くことなんて滅多にないですからね
時代が進むにつれてイヤホンがより身近になって、みんなで聴くというよりはそれぞれ個人で楽しむようになった……のかな
(話が逸れる)
主人公が得た力を説明するための例としてこのシーンが描かれています
「例として」と書きましたが、メタ的には、どのようなシーンを用いて描くかは著者の嗜好が特に反映されるように思います
なぜなら、「例として」何を描くかには無数の選択肢があるからです
一方、こちらの短編漫画『ポストの中の明日』はSFですから、おそらく初めにアイディアがあって、そこに肉付けするかたちで筋が出来上がったのではないか
SFには科学的な根拠が必要ですから、ある程度ストーリーは制約されます
だからこそ例示の部分において著者はそのぶん自由です
このシーンはSFでありつつ、純文学のようでもあると思います
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