タイムマシンができるには、そしてできたら——
基本情報
著者 藤子・F・不二雄
短編 『あいつのタイムマシン』1979年 漫画アクション
書籍 『藤子・F・不二雄 SF短編コンプリート・ワークス 4 パラレル同窓会』紙:2023年 小学館 / 電子:同年 同社
冒頭
1人でタイムマシンづくりに奮闘している鉄夫
主人公・正男はそんなタイムマシンづくりにかまけて職もパートナーもない鉄夫を気にかける
やがて正男が帰宅するとその優しい妻・みっちゃんが玄関で出迎えてくれて——
感想|グッとくるコマ〈序盤より〉
タイムマシンをつくりたい友人(主人公:左)
1人でタイムマシンづくりに奮闘している鉄夫は、そのせいで28歳で職がなくパートナーもおらず、主人公・正男から呆れられている
タイムマシンは大学や研究所や大企業などで、多くの場合高名な物理学者たちによって、しかも大金を注ぎ込まれて研究されているようですから、個人で発明しようとするのは無謀かもしれません
こちらの短編漫画『あいつのタイムマシン』でもそのような印象で描かれている部分があります
でもある種のバカやってる人間って魅力的なんですよね
本心からそう思います
それは実生活でもフィクションでもです
ここは短編漫画の感想とおすすめを記す場ですから、フィクションの場合の話をしたいのですが、バカやってる人間はそれだけで物語を大きく動かす原動力となります
登場人物の全員が理知的だったら、結局おもしろい出来事など起こらないのです
ですから最近特に話題にあがる多様性というのはこの世界に必要なものだとつくづく思います
図らずも社会派な話になっちゃいましたね
漫画の中で描かれる漫画
主人公・正男は漫画家です
ちなみにSFを描いているようで、作中で交わされる編集者との談義は読者(私たち)がこちらの短編漫画『あいつのタイムマシン』の構造を理解するのに一役買っています
ちょっとややこしいですが、藤子・F・不二雄氏(以下F氏)自身もSFを描く漫画家ですから、『あいつのタイムマシン』の主人公・正男はある部分においてF氏の分身とも言えるでしょう
そこでは漫画を描くうえでの苦労なんてものも描かれているわけですが、このほんのり赤裸々な感じが、なんと言いますか、おトクな気がします
良いもん読んだなあ、みたいな
ご覧の通り、主人公・正男は『タイムパトロール110』というタイトルのSF漫画を描いています
よく見ると画風がF氏のシンプルなものと異なり、ちょっと劇画よりですよね
これはもちろんF氏が、自身と正男が読者にとって混同されないよう配慮されたのだと思います
気遣いがあって嬉しいなとか、F氏は劇画っぽい絵も描けるんだなとか、とにかくたくさんの感想を抱ける1コマですよね
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