とんかつが点と点を線で結ぶ——
基本情報
著者 豊田徹也
短編 『とんかつ』2012年 アフタヌーン
書籍 『ゴーグル』紙:2012年 講談社 / 電子:同年 同社
冒頭
15年前、飛田工業に融資した際の担保物件が架空だった
そんな暴露の手紙が匿名でなつめ銀行に届いた
この銀行の検査部に属す主人公・諏訪千秋は、事件当時、融資課にいたという坂井から証言を引き出すため——
感想|グッとくるコマ〈序盤より〉
とんかつがキー
こちらの短編漫画は『とんかつ』というタイトルですが、まさにその通りで、とんかつがストーリーにおいて重要な役割を果たします
私自身、読み進めていてグルメ漫画『美味しんぼ』(原作 雁屋哲 作画 花咲アキラ)みたいだなと思っていたら、作中でも主人公が「なんですか その美味しんぼみたいな話は」と発言していて思わず笑いました
非グルメ漫画でありながら——『とんかつ』をあえてジャンル分けするならばヒューマンドラマでしょうか——料理がポイントとなる物語は、ちょこちょこ存在するようです
(と言いつつ、私は記憶力が乏しいのであんまり思い出せないのですが)
パッと浮かぶのは落語の『時そば』とかでしょうか
なんと言いますか、料理には真心がありますよね
人が手間暇かけてつくったものでありながら、芸術とはまた違って功名心が前面に出てくることがなく、ただ純粋に食べる人に幸せになってほしいという思いがある
だから『とんかつ』をはじめ料理を中心に展開する物語は、読者の心をじんわりと温めてくれるのかもしれない
主人公・諏訪千秋は銀行検査部に属している
主人公は銀行員……のはず
私には銀行の運営に携わる職業に対する知識がほとんどなく、銀行検査部である主人公・諏訪千秋が銀行員という広い概念に含まれるのかすら判断できません
著者の豊田徹也氏が銀行で働かれていたのか、それとも綿密な取材を行われたのかは分かりませんが、銀行のシステムや専門用語などが随所で取り上げられ、(へえ、銀行ってこういう世界なんだ)と学ぶ楽しさがあります
一方で正直な話、先述の通り最初に難しいシステムや専門用語が立て続けに登場するため、(ん? どういうこと?)と頭を捻ってしまうこともありました
難しい話題であれば必然的に文字数も多くなるため読むのが大変だったりもする
しかし、読者としてそれを乗り越えて理解しようと頑張るからこそ、そこには没入感が生まれ、真の意味で物語を楽しめるのかもしれません
1回読んだだけでは理解が及んでいない箇所もありましたが、読み終えてもう一度初めに戻って読み返したところ、(ああ、なるほど!)とスッキリしました
ぜひこの少しばかりタフな闘いに挑んでみてください
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