一人ひとりの使命——
基本情報
著者 藤子・F・不二雄
短編 『カンビュセスの籤』1977年 別冊問題小説
書籍 『藤子・F・不二雄 SF短編コンプリート・ワークス 3 カンビュセスの籤』紙:2023年 小学館 / 電子:同年 同社
冒頭
エチオピアへの遠征の帰路、ただならぬ事情があって荒野に迷い込んだペルシャの兵士・サルク
夜、疲労と飢えで生死を彷徨うなか、遠くに光を発見する
夜が明け、その建物まで辿り着き、入ってみると——
感想|グッとくるコマ〈序盤より〉
荒野の夜空
綺麗ですね
極端に言うとそれだけです
それで完璧だと思う
書籍のタイトルに「SF短編コンプリート・ワークス」とあり、ご賢察の通り、そこに収められたこちらの短編漫画『カンビュセスの籤』はジャンルで言うとSFです
それもちょっとしたものではなく、結構入り組んだ読み応えのあるタイプの
ですから、ある面では複雑なシナリオとの対比で、特に序盤にいくつか描かれたありのままの自然が一段と美しく感じられます
(SFを覚悟して読む1度目でも、SFを読解するよう努めた後の2度目でも)
うまい緩急だと素直に思います
シナリオだけで突っ走らないバランス感覚はやはり流石です
背景って藤子・F・不二雄氏が描いているのでしょうか?
それだと重労働すぎるか
だったらアシスタントが?
もしアシスタントの場合、F氏はどの程度要望を伝えるのだろうか?
僕も下手くそですが絵を描いていまして、常々絵を描くのは大変な作業であると思い知らされています
だからかもしれませんが、よく描き込まれた背景を見ると、なんと言いますか、拝みたい気持ちになります
パサルガダエ(主人公:右下)
不勉強なもので、パサルガダエが実在の地名か、それとも架空のものか最初は判断がつきませんでした
読み進めていくとペルシャ帝国に実在していたことが分かります
(親切にも、ちゃんと自然な流れで説明がなされる)
最初から「ああ、昔ペルシャにあって、今はイランの!」と気づければもっと臨場感をもって物語を読み進められるのにね
世界史か地理か
とにかく勉強は大事
架空の(あるいは全く実現していないわけではないけれど、ほとんど実用はされていない)モチーフをもってして描くSFと、まず確実に発生した史上の出来事を掘り下げるかたちで描く歴史モノ、この異なるジャンルが1つの物語において交差するので、読んでいてすごく充実感がありました
きっと整合性をとるのがかなり手間でしょうし、そもそも交差させるシナリオを考えるのも——ひらめくという表現が近いかもしれませんが——簡単なことではないでしょうね
よって、もちろん誰でもできる所業ではないから、希少性があってさらにその挑戦の姿勢がビリビリ伝わってきて、読者としては度肝を抜かれる——そんな短編漫画です
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