藤子・F・不二雄『ウルトラ・スーパー・デラックスマン』

強さの代償——



基本情報

藤子・F・不二雄『藤子・F・不二雄 SF短編コンプリート・ワークス 3 カンビュセスの籤』小学館 表紙
引用元:藤子・F・不二雄『藤子・F・不二雄 SF短編コンプリート・ワークス 3 カンビュセスの籤』小学館

著者 藤子・F・不二雄

短編 『ウルトラ・スーパー・デラックスマン』1976年 S-Fマガジン

書籍 『藤子・F・不二雄 SF短編コンプリート・ワークス 3 カンビュセスの籤』紙:2023年 小学館 / 電子:同年 同社

冒頭

理由あって社員たちに心底恐れられている日星商事の待機室長・句楽

ひょんなことから、社員・片山は句楽に家まで遊びにくるよう誘われる

心配から行かないでと涙を流す妻を宥め、片山は車で句楽の家へ向かう——

感想|グッとくるコマ〈序盤より〉

藤子・F・不二雄『ウルトラ・スーパー・デラックスマン』の1コマ シイン
引用元:藤子・F・不二雄『ウルトラ・スーパー・デラックスマン』-『藤子・F・不二雄 SF短編コンプリート・ワークス 3 カンビュセスの籤』小学館より

シイン

 

周囲が静かであることを示すオノマトペ、シインまたはシーン

漫画ではお馴染みで、音がないものに音をあてるという画期的な発想です

これはマンガの神様である手塚治虫氏が発明した……とどこかで聞き、私もそう認識していましたが、今ネットで少しだけ調べたら、それ以前から小説で使われていたという話も

(……まだ私自身の研究が足りていないのであくまで一説です)

 

オノマトペって面白いですよね

私も下手くそですが小説を書いており、小説にオノマトペを用いる際はどれを選ぼうかワクワクします

漫画を読んでいても、(著者はノリノリでオノマトペを使っているなあ)と楽しさが伝わってくること、ありますよね?

藤子・F・不二雄『ウルトラ・スーパー・デラックスマン』の1コマ お気をつけて
引用元:藤子・F・不二雄『ウルトラ・スーパー・デラックスマン』-『藤子・F・不二雄 SF短編コンプリート・ワークス 3 カンビュセスの籤』小学館より

お気をつけて

 

先を急ぐ市民に対して警察が気遣う言葉をかけている

大したことではないですが、ちょっとだけほっこりします

そうでもない?

 

これは私の嗜好の問題かもしれません

なんだか警察ってほんのり好きなんです

たまにXとかInstagramとかYouTubeとかで、警察のことが好きだという幼児のためにパトランプを光らせてあげる映像がアップされていたりする

あとは、事件じゃないのに幼児が110番しちゃって、何もないと分かった警察がごっことして幼児から事情聴取をする——みたいなシーンも

 

読者の嗜好によって同じシーンでも受け取られ方はきっと違います

芸術の興味深い点ですよね

藤子・F・不二雄『ウルトラ・スーパー・デラックスマン』の1コマ 女性がこんなところにたった1人で(主人公:中央)
引用元:藤子・F・不二雄『ウルトラ・スーパー・デラックスマン』-『藤子・F・不二雄 SF短編コンプリート・ワークス 3 カンビュセスの籤』小学館より

女性がこんなところにたった1人で(主人公:中央)

 

明らかにそれと分かる親切な伏線

見てすぐに読者としてこのシーンは大事だと悟り、ちゃんと記憶しておくため、伏線が回収される際に(そんな前振りあったっけ……?)というすれ違いが起きにくい

藤子・F・不二雄氏の丁寧な仕事というか、やはり親切心だろう

小説家の村上春樹氏は「文章を書く際に大事なことは?」という問いに「親切心」と答えられていたはず

 

F氏の特に短編漫画は、登場人物やストーリーに全く過不足がなく驚かされますよね

描写されるすべてが必要なものであるため、読んでいてパズルが解けていくみたいで爽快

先述の伏線も、(F先生が描写するということはこのシーンも重要なんだ)というF氏と読者の間においてコンセンサスがあるからこそ成り立っているのかもしれない

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